スティックPCはNASの夢を見るか

スティックPCがなんと1万円!!

http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/news/news/20151020_726574.html

Windows10のライセンス料よりも安いわけで、もう買うしかないでしょう・・・。

で、用途。何に使おうか・・・と考えていたのですが、ちょうどNASを導入しようと思ってました。しかし、HDD抜きのNASケースだけでも1万5千円はします。

スティックPCの方が安いですよね。それに、スティックPCは低消費電力なので、ファイルサーバにならないだろうか、と考え、実際にやってみたら、スティックPCをNASにするのには意外と苦労したけど、まあまあうまく動いた、という記録です。

 

メリットとデメリット

市販のNASボックスを使わず、スティックPCをファイルサーバとして使う場合のメリットとデメリットを挙げていきます。

メリットは、なんといっても安いこと。

また、WindowsでAtomなので、パフォーマンスは高いため、たとえば、リモートデスクトップで外出先からメールチェックをしたり、ちょっとした作業をしたりもできます。アプリケーションもインストールし放題、制限はありません。

バックアップ用途で使う場合も、Linuxのファイルシステムに起因するファイル名制限などもなく、長いファイル名のURLリンクファイルなども、何にも気にせずコピーできます。

逆にデメリットですが・・・

これは最大のデメリットだと思います。イーサネット端子がない!!無線LANしかないため、NASにするには、USBのLANアダプタ(NIC)を導入する必要があり、ボトルネックになります。例えば、フルHDのMPEG2-TSストリームですと、3本でコマ落ちする場面がありました。スティックPCのUSB端子は、USB2.0だからです。このデメリットをNASとして受け入れられるかというのが最大のポイントだと思います。

HDDもUSB2.0経由接続なので高速とは言えませんが、LANがボトルネックになるので気にならないかもしれません。

逆に、この転送速度以外のデメリットは、工夫と努力でなんとかなります。その工夫を挙げていきます。

 

USB NICを導入

NASとして使うのに無線LANではあまりにも不安定なので、さすがに避けたいところ。そこで、USB接続のNICを導入します。スティックPCのUSB端子はUSB2.0のため、USB3.0のNICを選んでも意味がありませんが、GbE対応のものを選ぶと、USBは3.0になってしまいます。

この商品なんかは安くてGbEにも対応し、いいと思いましたので、これにしました。このスティックPCはUSB端子が二つあるので、HDDとLANは別の端子に。

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小さな本体にでかいUSBHDDケースが繋がってる様子はシュールです


ただし後述しますが、結局もう一つUSBデバイスを接続しなければならなくなったため、結果的にはUSBハブを使いました・・・。

 

モニタなしで動くのか

まず疑問なのはこれですね。HDMI端子が特徴的なスティックPCで、そもそもHDMI端子に未接続の状態で動作するのか、ということです。

結論から言いますと、動作します

ただし、制限事項があるので、工夫が必要です。モニタなしで動かすためにしなければならない設定を説明しますね。

 

Windowsセットアップ

まずは、スティックPCにモニターを接続してセットアップします。この際にはモニタは必須です。キーボードとマウスも接続します。

セットアップは、メインで使うPCの(またはOneDriveの)Microsoftアカウントと同じアカウントでセットアップしてください。OneDriveのWeb版経由で、他のPCのローカルドライブにアクセスできるからです。これでNASとしての要件はクリアです。あら簡単。

 

パスワードなしのログイン

Windows 10では、パソコンを起動した際、Microsoftアカウントのパスワードを求められますが、そもそも画面もキーボードも接続しない状態で稼働させたいので入力手段がありません。なので、あらかじめ、パスワードなしでログインできるようにしておく必要があります。

Windows10のログイン方法はMicrosoftアカウントにします。PINは設定してはいけません。

その状態で、netplwizを実行します。

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出てきたウインドウで

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デフォルトでは、「ユーザーがこのコンピュータを使うには、ユーザー名とパスワードの入力が必要(E)」のチェックボックスにチェックが入っていますので、これを外します。OKを押すと、以下のウインドウが出てきます。

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このウインドウでは、ユーザー名にMicrosoftアカウント、パスワードはそれに対応するパスワードを入力します。PINでは動作しませんでしたので、くれぐれもPINは使わないでください。

 

リモートデスクトップ

スティックPCにプリインストールされているのは、Windows10 Homeです。そのため、リモートデスクトップのサーバ機能が使えません。

なので、Chromeリモートデスクトップを使います。

 

Google Chromeブラウザをインストールし、PCやスマートフォンで使っているGoogleアカウントでChromeにログインします。

そして、Chromeリモートデスクトップアプリをインストールします。起動すると、

 

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Chrome リモート デスクトップを使用してこのパソコンにアクセスするには、リモート接続を有効にする必要があります、と表示されますので、その横の「リモート接続を有効にする」ボタンを押します。

すると、

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このようなウインドウがポップアップしますので、「同意してインストール」をクリック。すると、「chromeremotedesktophost.msi」がダウンロードされます。これをインストールし、PINを入力。僕は6桁の数字にしました。WindowsやMicrosoftアカウントのパスワードとは関係ありません。

 

このように設定しておいて、PCやスマートフォンでChromeリモートデスクトップを起動すると、先ほど設定したPINでログイン出来る、スティックPCへのリモートデスクトップが完成。以降は、リモートで作業できます。

 

マウスカーソルが表示されない

Chrome リモート デスクトップのウインドウに入ると、マウスカーソルが表示されなくなる場合があります。これは、スティックPCに物理的にマウスが接続されていない場合に発生します。一時的に、コントロールパネルからマウスの設定でマウスカーソルのデザインを指定すると表示されるのですが、リモートデスクトップを再接続するとやっぱり消えてしまいます。

解決方法は、何でもいいからマウスを接続するしかないです。壊れていても何でもかまいません。

このためだけにUSBハブを使いました。せっかくUSBが2端子あって、NICとHDDでちょうどよかったのに・・・。

 

解像度が設定できない

物理的にモニターを接続していると、その解像度でリモートデスクトップが表示されます。が、モニターがないので、低解像度で表示されてしまうことがあります。しかし、解像度を設定しようとすると固まってしまうことがあります。

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その場合は、リモートデスクトップの左上の三本線のメニューから、「デスクトップを画面に合わせてサイズ変更する」「ウインドウに合わせて縮小」の二つにチェックを入れます。

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上記の状態で、デスクトップで右ボタンクリック、ディスプレイ設定→ディスプレイの詳細設定で解像度を指定すると解像度が変わります。うまくいかない場合は、画面を閉じたりして何度かやってみてください。うまくいきます。

 

電源オプションで常時稼働に設定、そして省電力に

コントロールパネルから、電源オプションを選択します。プラン設定の変更→詳細な電源設定の変更をクリックします。

現在利用できない設定の変更をクリックしておいてくださいね。

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▲復帰時のパスワードはいいえにしましたが、そもそもスリープモードはスティックPCに搭載されてないので関係ないと思います。HDDの省電力対応はお好みで。

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▲これが一番重要。次の時間が経過後休止状態にするを「なし」に。

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▲あとは省電力になりそうに設定します。とにかく、勝手に電源が切れたりしない限りは、適当でも動くと思いますが、省電力な方が発熱も少なくて寿命も長くなるかも知れません。

 

ファイル共有の設定

いよいよ、肝心のファイル共有(SMB)の設定になります。

スタートメニューの設定より、ネットワークとインターネットをクリックし、左のメニューのイーサネットをクリックすると、

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この画面が出てきますので、「イーサネット 接続済み」をクリック。

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「このPCを検出可能にする」がオフになっている場合、オンにします。この操作は、以下の画面で影響が出ます。

コントロールパネルから、ネットワークと共有センターを開きます。左のメニューの「共有の詳細設定の変更」をクリックします。

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この画面では、(現在のプロファイル)とあるのが、上の「プライベート」になっていますね。さきほどの設定→ネットワークとインターネット→イーサネットの「このPCを検出可能にする」がオフになっている場合、ここが「ゲストまたはパブリック」に(現在のプロファイル)が表示されます。

NASは公共のインターネット接続の場で使うものではなく、おうちや会社などで使うものであるため、プライベートにしておきます。「ゲストまたはパブリック」に現在のプロファイルがあるままですと、ファイル共有がうまくいかない場合があります。

なので、現在のプロファイルは、必ずプライベートであるようにしてください。

話を戻しますと、上記の画面の通り設定します。

「ネットワーク探索を有効にする」
「ファイルとプリンターの共有を有効にする」
「ユーザーアカウントとパスワードを使用して他のコンピューターに接続する」

がオンになるように設定します。

次に、全てのネットワークをクリックします。

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「ファイル共有の接続」では、「40ビット暗号化または56ビット暗号化を使用するデバイスのためのファイル共有を有効にする」にチェック。理由は、もしネットワーク上に、Windows10や8.1のPCのみがある場合は、128ビット暗号化でかまいませんが、ネットワークメディアプレイヤーや古いOSのPCなどがある場合は、必ず40ビットまたは56ビットにチェックします。互換性確保のためです。

「パスワード保護共有」は「無効にする」を選択します。これで、パスワードを求められることなくネットワークフォルダに接続できます。

 

共有フォルダーの設定

共有したいフォルダを右ボタンクリック、プロパティ。プロパティウインドウの共有タブをクリック。

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共有ボタンを押しますと、

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このようなウインドウが出るので、プルダウンメニューをクリックし、Everyoneをクリック、追加ボタンを押します。すると、一覧に追加されますので、アクセス許可のレベルを設定します。

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読み取り/書き込みをクリックし選択。共有ボタンを押します。

次に、元のプロパティ画面の共有タブから、詳細な共有(D)…をクリックします。

 

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このようなウインドウが出ますので、「このフォルダーを共有する」にチェックを入れます。共有名には、ネットワークフォルダとして表示させたい文字列を入力します。

次に、この画面の「アクセス許可」をクリック。

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この画面で、「フルコントロール」にチェックを入れ、OKを押します。

これで共有は可能なはずです。が・・・・

 

特定のデバイスで、特定のフォルダだけパスワードを求められ、接続できない

USBHDD上のフォルダや、場合によってはドライブごと共有すると思いますが、たとえば、2基のHDDを個別認識させている場合、一方のドライブ上で共有したフォルダは問題なくアクセスできるのに、もう一方のドライブ上の共有フォルダにアクセスしようとすると、ユーザー名とパスワードを求められることがあります。

全体のネットワークの共有設定でパスワードなしの共有にしているにも関わらず、です!

しかも、ドライブごとに挙動が違うとか、わけわからん。

しかも!

PCから接続したらうまくいくのに、ネットワークメディアプレイヤーなど、PC以外のデバイスや、Linuxからアクセスしようとすると、上記のような現象が発生したりします!

これは、どうもスティックPCのメモリが少ないのが原因のようです。設定で回避できます。

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レジストリエディタを起動します。

そして、

HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\LanmanServer\Parameters

このキーを探してクリックします。

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左のツリーからParametersをクリックした状態ですと、このように表示されますので、空白のところで右ボタンクリック、新規→DWORD(32ビット)値(D)をクリック。

新しい値 #1と表示されるところに「IRPStackSize」と入力します。そして、その項目をダブルクリックします。

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値として、16進数で「1e」と入力。10進数に切り替えると、「30」となります。これでOKを押し、再起動すると、ユーザー名とパスワードを求められることなく接続することが出来るようになります。

 

ChromeやFirefoxで何も表示されない

リモートデスクトップで接続時、ディスプレイをつないでいないと、一部ブラウザの画面表示が空白になる問題があります。

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これは、画面描画のハードウエアアクセラレーションの問題です。Chromeですと、起動時パラメータなどで色々やってみたけどだめでした。。。一度ディスプレイにつないで、オプションでハードウエアアクセラレーションを無効にするしかなさそうです。

Firefoxの場合は、モニターなしでも設定できました。

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Firefoxの、なんとなくメニューのあるとこらへんをクリックすると、なんとメニューが出てきます。ので、メニュー最下部の?マークをクリックします。

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そして出てくる選択肢から「アドオンを無効にして再起動」を選択します。

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出てくるダイアログボックスのここらへんをクリック。

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今度はちゃんと表示されますので、セーフモードで起動します。

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すると、普通に表示されますので、メニュー→オプション→詳細で、ハードウエアアクセラレーション機能を使用する(可能な場合)(R)のチェックを外します。これで普通に使えるようになります。

 

速度は遅いが実用性は高い

先述の通り、USB2.0接続のNICがボトルネックになるので、速くはないです。USB2.0はデータ転送が最大480Mbps。GbEの半分以下ですね。しかし、実用性を損なうほどではないと思います。

しかし、それを補ってあまりあるのが、リモートデスクトップで何でも実行できてしまう点。しかも、その操作がスマートフォンでもできてしまうわけで、こんなに便利なことはありません。ただ、リモートデスクトップも操作で一拍ずつ待たされる感じで、快適とはいいがたい感じです。ほかのPCに接続したときよりも明らかに遅いです。

しかし、たとえば、メインのPCのデータが必要になり、しかもNASにバックアップしてなかった!!という場合だって、まずスティックPCにリモートデスクトップで接続、WakeOnLan(WOL)でメインPCを起動し、メインPCにリモートデスクトップ接続して操作すればいいわけです。まあ、OneDrive経由でファイルを取り出すだけでもいいですけどね。

ただ便利なのは、僕は、常にメール(Thunderbird)のストアをNASに同期するようにし、リモートデスクトップでメールの読み書きが出来るようにしています。すると、いつでも仕事のメールも送受信できます。

 

常時起動で耐久性は?

NASとなると、常時稼働が当たり前。こればっかりは、長期稼働させてみないとわかりません。本体はそれなりに熱くなりますので、夏期は冷却したほうがいいかもしれません。が、アクセスしていないときは、意外と熱くないので、アイドル時はきちんと休んでいるのかも知れません。

コントロールパネルの電源オプションで、きちんと省電力にしてやることが大切です。それにしても、USB電源でPCは動くようになったのですね・・・。i386のころからPCを使っていて、Pentium90MHzのころから自作していたので、このフォームファクタは衝撃的ですらあります。

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